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現場に行かない国際協力!?トーゴ共和国とつながるPCM研修

2021.03.23

国際協力サロンで行った国際協力プロジェクトで必須と言っても過言ではないPCM(:Project Cycle Management)の研修内容をお届けします!

研修ではPCM専門家の三好崇弘さんをオンラインでお招きし、サロンメンバーが担当するトーゴにトイレを作るプロジェクトをもとに、PCMを勉強しました。

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三好崇弘(みよし たかひろ)
1994~2001年 ㈱福山コンサルタント 海外事業部(海外における交通プロジェクト調査)、2002~2004年財団法人 国際開発高等教育機構(プロジェクトの評価・改善調査・参加型研修)2004年 有限会社エムエム・サービスを設立、同年に大迫正弘氏(初代理事長)とともに当団体の前身となるPCM-Tokyoグループを設立、翌年にNPO法人化し副理事長に就任。2016年~18年1月まで理事長。現在は会員および監事役。国際協力機構(JICA)によるコンサルティング業務(派遣国 中国、ガーナ、コロンビア、ハンガリー等)、JICA専門家(ザンビア9年間)。 PCM 関連の研修講師業務 計50回以上(受講者計約1,500人)、JICA客員研究員。

ここまでみればよくある研修なのですが、今回特別だったのは、「直接現地と繋がれた」点にあります。

研修の最後には、ワークショップで出来上がった計画表をトーゴ農村部の現地にいるトイレプロジェクトを担当する方にプレゼンし、感想をもらいました。

PCMについて学ぶだけでなく「コロナ禍で現地に行けなくてもできる国際協力の形」につながるヒントをいただけた、非常に実りのある研修でした。

PCMとは?

PCMとは、Project Cycle Manegementの略で、国際協力プロジェクトや行政の事業を計画する際によく使われる手法です。ある問題に対して、どんな関係者が問題に絡んでいて、その問題はどんなロジックで起こっているのかを分析した上で、解決策を考える上で非常に役立つツールです。

ここでは、いくつかあるPCMの行程の中でも重要な「関係者分析」「問題分析」について紹介します。実際の研修では「トーゴの下痢性疾患」をテーマに計画を立てましたが、わかりやすいように「生徒A志望校合格プロジェクト」と題して、「生徒Aが大学受験に合格するにはどうしたら良いか?」を考えていきます!

関係者分析

PCMはいくつかの行程に分けられます。まず、問題に誰がどんな立ち位置で関わっているのかを分析する関係者分析

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この段階では、プロジェクトの関わる全ての人物を洗い出し、どの立場でどのような利害を持っているのかを分析します。

例えば、受益者である「生徒Aの両親」は生徒Aが志望校に行くことによって、親孝行で家を買ってもらうなどの将来的な何かしらの利益を得る可能性があります。また同時に、両親はプロジェクトの実施者です。受験は家庭の協力なくして成功できません。そして、両親は生徒Aを合格させるために出資を行う「財政負担者」でもあります。

こうしてみると、このプロジェクトを行う上で両親はかなり重要な役割を担っていることがわかります。

また、「反対者」の項目は「プロジェクトを始めることで不利益を被る人」が当てはまりますが、それにはもしかしたら「弟/妹」が兄/姉の成功を妬んで「受験に合格してほしくない」と思うかもしれないし、「祖母/祖父」は、生徒Aが女の子であれば「女の子なのだから家にいなさい」という固定観念を持っているかもしれません。

このように、何かプロジェクトを始めるときには、たくさんの関係者(ステークホルダーと呼ばれます)のさまざまな思惑が交錯します。関係者分析によって、そうしたステークホルダー同士の力関係、利害関係を明らかにし、プロジェクトを円滑に進めることができます。

問題分析

問題分析は読んで字のごとく、「プロジェクトを進める上で中心的な問題を解決するにはどうしたら良いか」を論理的に考えていく行程です。

この行程では、まずプロジェクトの中心となる「中心問題」を一つ選び、「なぜそれが達成できていない状態にあるのか」を「なぜーなぜなら」の論理で噛み砕いていきます。

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例えば、生徒Aの中心問題が「英語の成績が低い」にあるとします。なぜ成績が低いのか?を考えると、その一つ下の「リスニング」と「英文読解」に問題があり、さらになぜそのふたつができないのかを分析して考えていきます。

この後にもいくつか行程がありますが、このようにして問題を炙り出し、問題に対して誰が何をすべきかを考えるのがPCMです。例えば、「学校でリスニング対策が不十分」なのであれば、「学校でリスニング対策が十分」である状態にするために、先生が学校に相談してリスニング教材費用の予算を増やす、などが手段として考えられます。

トーゴ現地と「つながる」現場に行かない国際協力の形

研修はZoomで、1日通してPCM作成を行いました。それぞれ3チームに分かれ、講師の方々とファシリテーターの進行で関係者分析や問題分析を行い、「トーゴの下痢性疾患を解決するにはどうしたらいいか」を話し合いました。

最後には実際にトーゴトイレ建設プロジェクトの現地担当者であるオリビエさんと中継し、出来上がったPCMをプレゼンしフィードバックをもらうという貴重な機会をいただくことができました。

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現地担当者のオリビエさん

「実際にトイレを建設するためには、村人との関係を築くのがすごく大切なんです。また、私一人だけではトイレ建設はできないので、日本の皆さんやもちろん現地の村人との関係も非常に大切です。」

私たちがプレゼンしたPCMに終始にこやかに明るく応答してくれたオリビエさんはとても活動熱心な様子で、研修後にこのPCMのpdfを送ってくれるように頼んでいました。

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プレゼン後、オフィス周りを紹介してくれたオリビエさん

このPCM研修を通じて講師の三好さんが伝えたかったのは「トイレ建設だけでは子どもの下痢性疾患はなくならない」ことでした。トイレを建てて、その管理維持は誰が行うのか、トイレを建てれば全員がトイレを使うようになって、下痢性疾患は無くなるのか。

社会課題はどこにおいても複雑で、さまざまな要因が絡まり合っています。おそらくそれが身にしみて一番わかっているのは、オリビエさんのような現地で問題解決に取り組む現地の人でしょう。

私たち日本人がオリビエさんのような現地の人と関わりを持つとき、できる役割は問題を俯瞰して、解決のためにどんなステップを誰と共に歩んでいけばいいのかを考えることではないでしょうか。PCMはそのために非常に有用なツールです。

たとえ現地にいけなくとも、今回のようにオンラインで現地の人と共に現地の問題を考えることはこれからの国際協力の主流になっていくでしょう。

国際協力サロンはこれからも、新しい国際協力の形をたくさんの人々と共に模索し続けていきます。

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